【第29回】アマチュア作家:葉月憂さんインタビュー

葉月憂『季節が重なる時』

 

―SEIKA MINORU PRODUCTIONのアマチュア作家、葉月憂。

 

彼の処女作『季節が重なるとき』が、6月にHP上で発表される。

 

高校受験直前の秋。中学三年生の潤一と百合子の間に芽生えた、淡く甘酸っぱい初恋。だが、やがてそれは、百合子の家庭にまつわる秘密が発覚して、理不尽にも壊されてゆく。とてつもない悪夢の中に溶けてゆく青春の中で、少年少女がどう現実に立ち向かっていくのかを描いた本作。

 

その発表に先立って、SEIKA MINORU PRODUCTION運営スタッフのライターXが著者本人にインタビューを実施し、この作品に込めた想いを語ってもらった。

 

1.内輪サークルからSEIKA MINORU PRODUCTIONへ―「制作MTGはカルチャーショックでした(笑)」

 

X:何故この作品を書こうと思われたのですか。

 

葉月:実は仕事が忙しいのを言い訳に、この五年間ぐらい書いてなかったのですが(笑)。普段懇意にしている真依愁人さんから、SEIKA MINORU PRODUCTIONに加入を勧められて、「ああ、なんか書かなきゃな」と。で、ちょうど、「次に自分が小説を書くなら、素直で純粋な感性の表現をやりたい」と思っていたので。そういう方向性を皆さんと詰めていった結果、今作のアイデアが出てきて書き出したって感じですかね。

 

X:ああ、そんな感じでしたね(笑)。いま当プロダクションに所属してもらってる作家さんって4人いらっしゃいますけど、思えば、葉月さん・水月さん・星さんは、先んじてキングオーサーと知り合った真依愁人さんが一気に連れてきたんですよね。

 

葉月:はい。ちょっと作品の話からは脱線しますが、もともと僕ら4人って創作仲間で、作品も見せ合いっこしたりはしてたんですけど、今までって、各々が勝手に書いて、出来たら「こんなんできた!どうかな?」っていうノリだったんですよね。内輪のサークル活動みたいな。それがSEIKA MINORU PRODUCTIONという形になって、制作MTGというものがあって、そこでプロット等を煮詰めていく・・という段階があったので、カルチャーショックでした(笑)。

 

X:では、もし葉月さんお一人で考えてた場合には、今作のアイデアというのは無かったですか?

 

葉月:ああ、もう、全然ないですね。もともと20代以上の若者たちが登場するような作品ばかり書いてた人間なので。でも今回、制作MTGの場で、「思春期の少年少女が出てくる話も書いてみたら?」と。確かキングオーサーさんに言っていただいて。「なるほど、やってみようかな」と。それがきっかけですね。

 

2.主人公たちの受難―「未成熟な感性でどう立ち向かおうとするかを現実的に描写した」

X:そんな思春期の少年少女を主役に据えるのは初めての試みだったと思いますが、やはり難しかったですか?

 

葉月:はい。とにかく「未成熟」に描かないといけないので・・そこはちょっと、自分が中学生だった頃の感覚を必死で思い出したりしながら書きましたね(笑)。

 

X:制作MTGの場では、新海誠さんやジブリ作品などが話題にあがっていたように思います。ああいった方向性も目指したのでしょうか。

 

葉月:いや、あくまで、雰囲気や質感を参考にさせてもらうって感じですね。いま仰った作品群は、全編通して、もっともっとピュアで前向きだと思うんですが、いかんせん今回のは、所謂<大人の事情>が影響してくるので・・完全に純真な感じにはどうしたって描けませんでしたね(笑)。

 

X:確かに・・本作の主人公たちには、どちらかというと現実的な受難がありますよね(笑)。

 

葉月:はい。どうすることもできない、抗いようのない状況が現実として目の前に発生した。その時、人生経験も少ない少年少女の未成熟な感性でどう立ち向かおうとするか、というのをきわめて現実的に描写したつもりです。

 

X:作品について伺います。本作は、子供たちの視点で物語が進行していく第一章と、16年前の大人たちの間で起きた事件が描かれる第二章、そして最後に、もう一度現在の子供たちの視点に戻ってくる第三章という構成になっていますね。

 

葉月:書き出した当初は最後まで子供たちの目線だけでいこうと思ってたんですけど。そこは悩んだあげく、16年前に起きた事件の臨場感も出すべく、大人たちの視点も入れようと思いました。

 

X:なるほど。個人的には良かったと思います。二章でかつての大人たちの想いもしっかりと描かれているので、三章に戻ってきて、子供たちが16年前の事件と<合流>した時に、感慨深いものがあったので(笑)。

 

葉月:良かったです。で、今回は<時の流れ>っていう大きなテーマがあったので、三章からエピローグに移行したときにも、その感慨深さを少しでも味わって頂ければと思いますね(笑)。

 

3.読者へのメッセージ

 

X:では最後に、読者の皆さまへメッセージをお願いします。

 

葉月:大人になっても、社会人になっても、いくつになっても、誰にだって、自分の思い出の中に青春時代や思春期ってあると思います。確かに、この作品でも描かれるような未成熟な時期で、色々と困難なこともあったかもしれません。だけど年齢を重ねていくと、かけがえのない思い出の一つや二つ、あると思います。本作を読んで、少しでもご自身の青春時代を思い返してもらって、懐かしく微笑んでくだされば幸いです。

 

X:ありがとうございました。

 

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